家の裏には、集落の開祖と呼ばれる『あきどんさん』の祠が祀られていました
私は、今からほぼ半世紀前、九州山地の山奥に生を受けました。
四方八方山に囲まれ、集落よりも先に続く道路は全て…山に阻まれて行き止まりのいわゆる限界集落でした。
物心つく頃には、ご先祖様が何故このような土地に住み着いたのか、不思議でたまりませんでした。
中学校までの9㎞の道は自転車通学でしたが、行きは20分、帰りは2時間かかり…
如何に傾斜が大きい地形が想像つくと思います。実家の隣のM家はちぃばあちゃん(曾祖母)の実家であり、家の裏には、集落の開祖と呼ばれる『あきどんさん』の祠が祀られていました。お盆、正月には、其々のご先祖様のお墓参りとは別に『あきどんさん』をお参りするのが習わしでした。
私は幼い頃から風変わりの子供だったらしく、2歳の8月の雨の夜、長靴をはいて外に飛び出して、
『ちぃばあちゃん行こ、ちぃばあちゃん行こ』と、せがんだそうです。
曾祖母は6月2日に亡くなったばかり、暦を見るとその晩はご先祖様が、戻ってくる日だったそうです。10歳の頃には、毎晩のように故郷が戦地に変わり、追いかけられて人と人が刀で切り合い、ずらりと庭先に生首が並べられている夢を見るので、怖くなり親に訴えましたが、一切相手にしてもらえませんでした。ただ祖母だけは話を聞いてくれました。
その後で必ず、『よな者に言うたらいかん
(訳:他の人に言ってはいけない)』
と言われました。
そんなある晩、ちぃばあちゃんに手を引かれ、ゴールの見えない空に続く長い階段を登る夢を見ました。
その日以来、全く落武者の夢を見ることは無くなりました。
郷の隣村の平家の落人伝説
故郷の隣村の平家の落人伝説は有名で、小学校の高学年の歴史の授業では、壇之浦の戦いの章に合わせて逃げ延びた平家の鶴富姫と、追討目的で山奥に辿り着いた那須大八郎の悲恋の物語を先生が語ってくれました。その頃には『あきどんさん』の苔むした祠に彫られた『安芸殿様』の文字に疑問を抱くようになりました。
勇気を出して父に尋ねたところ、
私
『あきどんさんには、
広島の殿様って書いてあるよ…
ってことは、この村は、
平家の落人の村じゃないと?』
父
『それはにゃあ、じゃったら
言い伝えられとるじゃろ』
(訳:それはない、そうだとしたら、言い伝えられてるだろう)
と、あっさり否定されました。
連日、金縛り、幽体離脱、見えない存在と目が合ったりで…
中学生からは、連日、金縛り、幽体離脱、見えない存在と目が合ったりで…
誰にも相談できず…
暗闇では気配を感じたら、本能的に息を吐き続けたり、般若心経を唱えたりしていました。
郡の総体で陸上競技場の外周に控えていた時、隣の中学校の自称サイキック女子が突然やって来て、『あなたの後ろに、小さい時に亡くなった、おばあさんがついてるよ』と言ってきたこともありました。
高校2年の時、ふと立ち寄った本屋で1冊の本が目に飛び込んできました。題名は忘れましたが、開いた頁には
『金縛りを回避する方法。
寝る前にご先祖様と守護霊様に
感謝の祈りを捧げる』
と書かれており、藁にもすがる思いでその日から実践しました。不思議なことにその日からパッタリと金縛りや霊を見ることも殆ど無くなり、守護霊様、ご先祖様、曾祖母の存在を実感し感謝しました。
あれから30年、お陰さまで無事に今日まで生かされて今があります。
4年前には祖母が他界し、その1か月後には熊本地震が起こりました。故郷の村にも震度5の揺れが度々襲い、水が使えなくなったりしたようです。そして、その2ヶ月後には、実家の真横を流れる川が氾濫しました。普段は穏やかで優しい川が、荒れ狂い、上流から転がり落ちてきた巨石は、橋を壊し、村のコミュニティセンターの1階や生活道路を土砂で埋めつくす未曾有の災害でした。土砂の流れがあと数10メートルずれていたら、実家も巻き込まれていたと思います。
祖母の初盆のために、故郷に帰省した時、幼い頃に見た風景を思い出せないほど変わり果てた川の様相に驚き、自然の驚異を感じつつ、ふと、祖母が要石の役割を担っていたと思いました。
毎晩寝る前に必ず祈っていた祖母。私は、自分にできることを考え、欄干が無くなった今にも崩れ落ちそうな橋の上でお酒と塩を撒きながら、集落の方々の命まで奪わなかったこと、今も家族が住まわせて頂いていることへ感謝の祈りをしました。
お気に入りのラジオ番組から『先祖の因縁』というワードが耳に飛び込み
そして3年前の2月、お気に入りのラジオ番組から『先祖の因縁』というワードが耳に飛び込み、思わず手が止まりました。先祖のお陰さまを感じて生きてきたので興味津々でした。
大上先生と道子先生がラジオの向こうで穏やかに話される声に…
聞けば聞くほど忘れかけていた、前筆した記憶が次々と思い出されました。
ラジオを繰り返し聞く中で、先生方にお会いしたい。
先生方なら今までの疑問に答えてくださるかもしれない。
そう思うと居ても立っても居られない衝動にかられました。
直近の大上先生の講演会、個人セッションを検索すると残りわずかでしたが何とかギリギリ申し込めました。
大上先生の講演会の3日前は、前年に亡くなった祖母の一周忌でした。
一周忌のために、前日から九州入りし一夜明けた朝、自称霊感ゼロの妹の旦那さんが、明け方、外でカシャンカシャンと金属がぶつかる音がするのを聞いたと、耳にしました。まるで刀がぶつかり合うような金属音。その時、十数年前に実家に帰省した夏の夜、あきどんさんの裏山を指差した娘が『鎧着た人が歩いているよ』と叫んだことを思い出しました。
私は、思わず、『あれは鹿だよ鹿』と、はぐらかしました。
子を持って分かる親の恩。
咄嗟に出た言動は祖母や父母と同じ…
娘を見えない何者かから守るためでした。
また、明け方の金属音の話を受けて、あきどんさんの祠一帯には今もなお、目に見えない何者かが在ると感じ、1人では怖いので(笑)、妹達を誘いあきどんさんのお参りをしました。
「先祖の因縁」講演会と驚愕の個人セッション
無事に今日を迎えることができた事への感謝と、
3日後に大上先生方にお会いすることをお伝えしました。
その直後から、吐き気と頭痛に襲われ、熊本空港離陸直前までぐったりでした。上空に飛んだ途端にスッキリ全てが軽くなるのを感じました。妹に連絡を取ったところ、同じように自宅に辿り着く前まで、体調不良が続いたようでした。
あきどんさん一帯が、
思わしい状態ではないと確信し、
個人セッションへの期待は高まるばかりでした。
あと少し…あと少し…
何者かに急き立てられているような、祈るような気持ちでした。
そしていよいよ待ちに待った、大上先生講演会、先祖代々の血脈を川の流れに例え、分かりやすく教えて頂きました。1番印象に残った内容は、
『先祖と自分は繋がっており、先祖のカルマは良くも悪くも下流に位置する子孫に流れ、
お清めすることは今の自分だけでなく、未来の子供や孫にも影響を与える』
というお話で、大切な子供達の姿を思い浮かべながらお清めの必要性を感じました。
次の日の個人セッションでは、道子先生に 開口一番、
『あきどんさんは平家の武士で、お父様は平家の末裔で、
一族を見守る役目を持っていらっしゃいますよ』
と言われました。また、
『最近でも「あきどんさん」周辺では、戦いが行われましたね』
とさらっと言われ驚きました。
あきどんさんの近辺は、西郷さん率いる西南戦争でも、戦地になったことがあったことを数年前に幼馴染みに口止めされて聞いていました。
この時、私が長年抱いてきた疑問が、吹き出しましたが、次々と大上先生と道子先生が、分かりやすく答えてくださいました。有り難いことに、同行してくださった嫁ぎ先のお姑様も、先祖の因縁の存在を理解してくださり、嫁ぎ先のお清めを一手に引き受けてくださいました。
三六九の儀を終えて、不思議な平家とのつながり
三六九の儀の日程が決まり、当日までは体調や心境が、変化したり重くなったりで、やっとの思いでサロンに辿り着きました。有難いことに、実家の母にはお仏壇に線香とお供えを、あきどんさんには、3月に退職された曾祖母の実家のお嫁さんが、線香とお供えを手向けてくださいました。
儀のお祈りの際には、先祖の苦しみ悲しみの意識が重なり辛くもなりましたが、大上先生のウタヒで光と共に軽くなり喜びが伝わってきました。儀の後の爽快感は、何とも言えないものがありました。
道子先生に、
『ご先祖様の中には、人身御供になられた方もいらっしゃいました。沢山の霊が、霊界に帰って行かれましたが、「あきどんさん」だけは、「わしはここに残る。此処でこの者達を見守る。」と言われてましたよ』
と、お伝えして頂いた時、あきどんさんの懐の大きさと優しさに触れ涙が止まりませんでした。
その後、導かれるようにして、平家の小説を書いていると言われる方に出くわしたり、熊野では平家を祀った祠に導かれたり、ここ10年来、毎年参拝をしている、河川の氾濫を防ぐための治水工事に、ご尽力頂いた薩摩義士をお祀りした神社にて、薩摩義士を取りまとめていた方が、平家の末裔だったことを知ったり、色々な出会いやご縁が繋がっていきました。
そして、その年の暮れに近所のお店の方が、面白い横浜の気功の先生と引き合わせてくださいました。その方は私の出身地を聞くなり、『平家ですね、私は源氏ですよ。これからは源氏も平家もなく、互いに力を合わせて、より良い世界を作りましょう』と言ってくださいました。
横浜の診療所に娘を連れて行った際には、季節外れの暴風雨に見舞われ、先生に、
娘が雨女で、前年の祖母の初盆では、視界ゼロのどしゃ降りに見舞われたことを伝え、その時の雲1つない晴天の九州に紅一点!?の雨雲の雨雲レーダーのスクショを見て頂いたところ…、先生は急に神妙な面持ちで、
『ここですよ、○○天皇さんが眠られている場所は。
私は10年前にお参りさせて頂きました。
Sさんを待ってらっしゃいますよ』
と言われました。自宅に戻り、改めて、○○天皇様の御陵の場所をネットで確認したところ…
『エエエエエエエーッ』
夜中でしたが、思わず叫んでしまいました。何故ならば、全国津々浦々諸説ありますが、横浜の先生が示した御陵は、私の実家の西側の山を越えた場所に位置していたからです。
親からは、タバコのじぃという妖怪が出るから
近づいてはいけないと言われていた西側の山…
その山の先には、平家が命懸けで守った方…
それが○○天皇様だった…。
実家の村は、あきどんさんが○○天皇様を
守護するために作った東の砦だった。
色んな言葉が頭の中を駆け巡りました。それから直ぐに飛行機を予約して九州に向かいました。末の妹と2人で、道中不可思議なことに遭遇しながら到着したのは日暮れ前、御陵は金色の夕日を背に輝いていました。お参り中には、御陵の直ぐ後ろに鹿が現れました。○○天皇様のお使いでしょうか?こちらをじっと見て、嬉しそうに跳び跳ねながら山の奥へと帰っていきました。
お参りが終わり、行きは必死で気付かなかった見晴らしの良い場所で車を停めて、美しい山々を眺めていたところ、1台の地元の70代くらいの男性が運転する軽トラが追いかけてきました。
突然目の前で停まり…
何者かに取り憑かれたように方言で語り始めました。
『今立っとるこの道は、
見えとる山全部ぐるっと一周、
繋がっとるとですよ。
ここに来るなら秋が綺麗かです。
今度は熊本空港からこん橋を通って
秋に来らすとええですよ』
と言い残して山道を下って行かれました。
妹はその後も…ナビが勝手に○○天皇様の方向を指し示す等、
次々と起こる不可思議な現象に喜ぶ私と裏腹に困惑していました。
あきどんさんは、私のご先祖様だった
そしてその年の秋、○○天皇様の御陵を目指し、再び九州へ。偶然にも隣の村では、年に一度の平家祭りが行われていました。○○天皇様の御陵には、色鮮やかな黄色い紅葉が見頃を迎えていました。次の日には、あきどんさんに、ご報告を兼ねてお参りをしました。M家のおじさんが祠の近くで草刈りをしていました。あきどんさんの横には、○○天皇様の御陵と全く同じ、黄色に輝く紅葉が植えられていました。
紅葉…安芸…紅葉まんじゅう…
そんなことを考えながら、あきどんさんの湯呑みに、昨日○○天皇様の御陵にお供えしたお酒を注ぎお参りしていると…、突然目玉がギョロっとして、眉毛の濃い武士の姿が浮かんできました。隣で草刈りをしているM家のおじさんとソックリで…、ひょっとしてM家は、あきどんさんの子孫では?と思い、M家のお嫁さんに電話で尋ねたところ、
『福岡のある方からはね、あきどんさんはM家の先祖って言われとるよ』と言われました。そして…いきなり、2歳の記憶がフラッシュバックしてきました。両方に杖をついて、必死に来る日も来る日も、あきどんさんのお参りをしていた曾祖母の姿…、M家から嫁いできた曾祖母…、つまりは、…あきどんさんは、私のご先祖様だった…
そして昨年には近所の蔵から、菊地の家紋の入った鎧が見つかったと、M家のお嫁さんから連絡を頂きました。西郷さんの遠い祖先は菊池氏…、最近読んだ本では○○天皇様は、壇之浦の戦い前に逃げ延び、その際には菊池氏や近隣の神社の宮司さん達が力を合わせて匿ったこと、西南戦争の際には、○○天皇様の御陵のある村で、西郷さんを匿ったことが書かれていました。
昨年…母や妹と母の実家の墓参りに行った際に…、ひょんなことから、○○天皇様の御陵に行こうということになりました。御陵前の神社の鳥居を見るなり、いきなり母が驚きの声を上げました。鳥居に書かれた神社の名前と母の実家の屋号が一緒だったようです。母方の祖父は、母の実家の地元神社の神主さんを勤めていました。母方先祖も○○天皇様を匿う、お役目の一旦を担っていたのかもしれません。
先祖の因縁…
自分で考えて行動しているつもりが動かさせられ、今までの全てのご縁のリレーも、この景色を通過するために存在していたと感じます。
三六九の儀を通して、ご先祖様の思いにまで辿り着けたことは、遥か昔を遡る時間旅行のようでした。
『奢れるものは久しからず』
『ご先祖様が繋いでくださった命のリレーの有り難さ』 を子孫に伝えていく所存です。(因みに、昨年初孫が誕生しました)
三六九の儀のお陰さまで、その他にも多くの奇跡を見せて頂きました。先祖の因縁、前世の因縁は、時間を越えて、遠いようで身近に存在し、私達はその影響を受けて生活しています。そして、今の私達の生き様は、未来の子孫に流れていく。
今世、そのことに気付かせてくださった、
大上先生、道子先生とのご縁に心より感謝いたします。m(__)m
※この体験談は、2020年に執筆されたものです。
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